ターゲットオーディエンスを理解するための調査方法
SNSマーケティングの世界で成功を収めるには、ターゲットオーディエンスを深く理解することが不可欠です。しかし、日々変化する消費者の嗜好やトレンドを追いかけるのは、時として茫洋とした海を航海するようなものです。本稿では、効果的なターゲットオーディエンス調査の方法について、実践的なアプローチを交えながら詳しく解説していきます。

1. データ分析:数字が語る真実
まずは、手元にあるデータから始めましょう。各SNSプラットフォームが提供する分析ツールは、オーディエンスの基本的な属性や行動パターンを把握する上で非常に有用です。
実践のポイント:
- インスタグラムのインサイト機能を活用し、投稿の到達度や engagement rate を分析
- フェイスブックのオーディエンスインサイトで、フォロワーの年齢層や地域分布を確認
- Xの分析ツールで、ツイートの反応が高い時間帯をチェック
- TikTokのクリエイターツールで、視聴者の興味関心カテゴリーを把握
例えば、ある化粧品ブランドのインスタグラム運用を担当していた際、投稿の分析から「製品使用方法を紹介する動画コンテンツ」の engagement rate が特に高いことが判明しました。この発見を元に、ハウツー動画の制作に注力したところ、フォロワー数が急増したという経験があります。
2. アンケート調査:直接の声を聴く
データ分析だけでは見えてこない、オーディエンスの生の声を聴くことも重要です。SNSの機能を活用したアンケートは、手軽に実施できるうえ、即時性の高い結果が得られます。
実践のポイント:
- インスタグラムのストーリーズ機能で、選択式のアンケートを実施
- フェイスブックのグループ機能を活用し、より詳細な意見を収集
- Xのポーリング機能で、簡単な意向調査を実施
- Google フォームなどの外部ツールを使用し、より詳細なアンケートを作成
私が携わったある飲食チェーンの案件では、新メニュー開発の際にインスタグラムのストーリーズでアンケートを実施しました。「次に食べたい新メニューは?」という質問に対する回答から、予想外にもヴィーガンメニューへの要望が高いことが分かり、メニュー開発の方向性を大きく変更したことがあります。

3. ソーシャルリスニング:会話の中にヒントあり
SNS上で行われている自然な会話を観察することで、オーディエンスの本音や潜在的なニーズを掴むことができます。
実践のポイント:
- 関連するハッシュタグの投稿をチェック
- 競合ブランドの投稿に付けられたコメントを分析
- Reddit や Quora などの質問サイトで、関連トピックの議論をフォロー
- Twitter の検索機能を使い、特定のキーワードを含む tweet をモニタリング
ある美容機器メーカーの SNS 運用を担当していた際、ソーシャルリスニングを通じて「時短」というキーワードが頻繁に登場することに気づきました。これを受けて、商品の「時短効果」を強調したキャンペーンを展開したところ、大きな反響を得ることができました。
4. コンペティター分析:ライバルから学ぶ
競合他社の SNS 戦略を分析することで、業界のトレンドやオーディエンスの嗜好を間接的に把握することができます。
実践のポイント:
- 競合の投稿内容、頻度、使用しているハッシュタグをチェック
- 競合のフォロワー層を分析し、自社との違いを把握
- 競合の高 engagement 投稿の特徴を研究
ある時計ブランドの SNS マーケティングを担当した際、競合分析を通じて「サステナビリティ」に関する投稿が多くのエンゲージメントを獲得していることに気づきました。これを受けて、自社の環境への取り組みを積極的に発信するキャンペーンを展開し、新たなオーディエンス層の開拓に成功しました。

5. フォーカスグループインタビュー:深い洞察を得る
少数の代表的なオーディエンスと直接対話することで、より深い洞察を得ることができます。オンラインでのビデオ会議ツールを活用すれば、地理的な制約を超えて実施可能です。
実践のポイント:
- 多様な属性の参加者を選定
- 自由な発言を促す雰囲気づくり
- 具体的なシナリオや仮説を用意し、詳細な意見を引き出す
あるスポーツブランドの SNS 戦略立案時、フォーカスグループインタビューを実施したことがあります。そこで、「SNS上での企業の社会貢献活動の発信」に対する若年層の複雑な心境(支持はするが、過度な自社アピールは反感を買う)を知ることができ、より繊細なコミュニケーション戦略の立案につながりました。
6. ユーザーペルソナの作成:具体像を描く
収集した情報を元に、具体的なユーザーペルソナを作成することで、チーム全体でターゲットオーディエンスのイメージを共有することができます。
実践のポイント:
- 人口統計学的特徴(年齢、性別、職業など)
- 行動パターン(使用する SNS、アクティブな時間帯など)
- 価値観や興味関心
- 直面している課題や悩み
例えば、ある教育系アプリの SNS マーケティングでは、「30代後半、共働きの母親、小学生の子供を持つ」というペルソナを設定しました。この具体的なイメージを基に、「忙しい日常の中でも子供の教育を大切にしたい」というメッセージを中心にコンテンツを作成し、高い共感を得ることができました。

7. A/B テスト:仮説を検証する
最後に、これまでの調査で得た仮説を実際に検証するために、A/B テストを実施することをお勧めします。
実践のポイント:
- テストする要素を一つに絞る(例:投稿の文言、画像のスタイルなど)
- 十分なサンプルサイズを確保する
- テスト期間を適切に設定する
あるファッションブランドの Instagram 運用で、「商品のフラットレイ写真」と「着用モデルの写真」どちらが効果的かを A/B テストで検証したことがあります。予想に反して、フラットレイ写真の方が高い engagement rate を記録し、その後のビジュアル戦略に大きな影響を与えました。
まとめ
ターゲットオーディエンスを理解することは、SNS マーケティングの成功において不可欠な要素です。上記の方法を組み合わせ、継続的に調査を行うことで、オーディエンスの変化を捉え、より効果的なコミュニケーション戦略を立てることができるでしょう。
しかし、最も重要なのは、これらの調査方法を機械的に適用するのではなく、常に「人」を理解しようとする姿勢を持ち続けることです。数字の裏にある感情、データの中に隠れた物語を読み取る力を磨いていけば、真にオーディエンスの心に響くSNSマーケティングが実現できるはずです。
介護経営総合研究所 代表 五十嵐太郎
名古屋大学経済学部を卒業後、株式会社リクルートにて通信事業、ブライダル事業、マーケティングに従事。
その後、民間介護会社、社会福祉法人にて大規模な経営改善を実現。2021年4月介護経営総合研究所を創業。
改善実績:採用コスト2,000万円削減、離職率5割削減、採用単価3万円で200人採用、人材紹介・人材派遣0
人材紹介会社費用の9割減、東京にて施設開設時に160人採用、利益率4倍、薬剤師応募を1時間で獲得、他多数。